見点：奪われた自由と恐怖の心理戦 「お前は蝶だ！俺だけの美しい標本にしてやる。」縄にうごめく肉体…。恐怖の戦慄に濡れる美女達の秘奥。 秩父の暗い世相の中、戦争の暗雲が立ち込めていた。絹問屋の娘・光子（高倉）と彼女の婚約者・栄吉は、一枚の赤紙によってその祝儀が見送られることになった。しかし、この出来事を境にして、光子と彼らの運命が暗転していくのだ。 ある日、光子の元に栄吉への召集令状を届けるためにやってきた郵便配達夫・和彦は、彼女の美しさに見とれてしまう。彼は巡礼姿で彼女に近づき、クロロフォルムを使って光子を土蔵に監禁してしまう。 光子は恐怖に濡れながらも、抵抗する。彼女は鏡を割り、日光を反射させて外にいる子供たちに居場所を伝える。しかし、帰ってきた和彦は子供たちに「彼女は気がふれている」と嘘をつき、彼らを追い払ってしまう。 監禁された光子は自由を奪われ、思うように行動することもできない。和彦は縄を使って彼女の首を絞め、彼女が逃げようとする試みを阻止する。絶望と苦痛に包まれた光子に、和彦は栄吉が戦死したことを告げる。 この衝撃的な事実に光子は完全に心を折られるかのように見えたが、それは違った。彼女は奪われた自由と恐怖に立ち向かい、最後の希望を抱いていたのだ。